今から10年ほど昔のことです。実家から母親が一人暮らしの私の所に遊びに来ている時でした。週末せっかくだから二人で出掛けようということになり寺院の多い土地を訪れることにしたんです。永代供養をお願いしたお寺は街からはかなり離れた山の中にありました。お寺の中を見学しているとお坊さんが「今日はどちらからお越しですか?」と話しかけてきました。お茶や茶菓子を出されてなんとなく親子で座ってお坊さんの上手なお話を聞いていると「お姉さん、水子ないかい?」と言われドキッとした私は、素直に「分かるんですか??」と聞いてしまいました。高校生の頃に若気の至りで妊娠したことがありました。将来の事を考えてその時はその子をおろすことにしたのです。あの出来事は自分の中で辛く、悲しい経験として残っていました。ただ母親からは「お父さんにも内緒だよ。誰にも言わず墓場まで持っていくんだよ。」ときつく言われていました。「水子を供養しないと悪いことが起こるよ。」とお坊さんに言われて、いつもならあまり相手にしない母が「今日供養することができますか?」と尋ねていました。「もちろんです。永代供養をおすすめしています。毎日お経をあげてご家族の替わりにご供養させて頂きます。金額は10万円となります。法事などで一回に数万円を納めますよね。それが永遠に供養できて10万円ですから決して高い金額ではありませんよ。」母は私のことが心配だったようで「お願いします。」と観光に行ったその日にお願いすることになりました。内心「高いお金を出させてごめんなさい。でも、ありがとう。」と思っていました。 確かに1度に支払う金額としては安いものではありませんが、供養してあげたいのにできていなかったので気持ちはとても楽になりました。いつもは不思議な話など嫌いな母が「きっと水子が供養してほしいって思っていたからこうなったんだよ。良かったよ。」と朗らかな顔をしてくれていました。今でも毎日お経をあげてもらって安らかに眠ってくれていると信じています。 |